北向きの土地はなぜ安い?建てる側から見た「安さの理由」と判断基準

北向きの土地はなぜ安いのか アイキャッチ 契約・業者選び

土地を探していると、北向きの土地は、周りより安く出ていることがよくあります。

「同じ広さで、こっちの方が数百万円安い」
「日当たりが悪いのは気になるけど、この価格差は魅力的」

そう思って、迷う人は多いです。実際、家づくりの情報を見ても「北向きでも工夫すれば大丈夫」「北側の光は安定していて実はいい」という前向きな話がよく出てきます。

でも、現場でいろんな土地と家を見てきた立場から、正直に言わせてください。

北向きの土地が安いのには、ちゃんと理由があります。そして、その安さは、建築費で相殺されることがあります。

土地代が安く済んでも、家を建てる段階でお金がかかって、結局トータルでは大して変わらなかった——そういうケースは、実際にあります。

今回は:

  • なぜ北向きの土地は安いのか
  • 安さが「建築費」で相殺される仕組み
  • 北向きで、本当に気にすべきこと(湿気)
  • 明るさは、実はそこまで神経質にならなくていい
  • それでも「アリ」なケース

を、建てる側の目線でお伝えします。

北向きの土地、買っていいのかな」と迷ってる方、判断の材料にしてください。


なぜ、北向きの土地は安いのか

北向きの土地は昔から人気がなく安い

まず、シンプルな事実から。

昔から、人気がないから安い

北向きの土地が安い理由は、身も蓋もないですが——人気がないからです。

日本の家づくりでは、昔から「南向きが good」とされてきました。日当たりがよく、明るく、暖かい。だからみんな南向きを選び、南向きの土地は高くなる。

逆に北向きの土地は、昔から避けられてきました。今の分譲地に残ってる北向きの区画も、多くの場合、他が売れて最後まで残ったものだったりします。過去の買い手たちが、みんな見送ってきた土地。それが、安さの正体です。

「安いには理由がある」を、まず受け止める

もちろん、「北向き=絶対ダメ」と言いたいわけじゃありません。後で書きますが、条件次第では十分アリです。

でも、まず出発点として、「安いのには、ちゃんと理由がある」ということは、受け止めておいた方がいい。安さだけを見て飛びつくと、後から「こんなはずじゃなかった」となりかねません。


安さは「建築費」で相殺されることがある

土地で浮いたお金が建築費で出ていくことがある

ここが、今回一番伝えたいポイントです。

日当たりの不利を、設計で補う必要がある

北向きの土地に家を建てる場合、日当たりの不利を、設計で補う必要が出てきます。

  • どう光を取り込むか
  • どう間取りを工夫するか
  • 湿気をどう逃がすか

こういったことを、しっかり考えて設計しないといけない。南向きなら普通に建てれば済むところを、北向きは「工夫」が必要になるわけです。

その「工夫」には、お金がかかる

そして、この工夫には、お金がかかります

  • 光を取り込むための、窓や間取りの工夫
  • 湿気対策のための設備
  • 場合によっては、外構での対策

さらに——北向きの土地の設計に強い、設計事務所や工務店に頼む必要も出てきます。誰に頼んでも、うまくいくわけじゃない。設計力のあるところに頼めば、当然その分の費用もかかります。

土地で浮いた分が、建物で出ていく

つまり、こういう構図になりがちです。

  • 土地代:南向きより数百万円安い(得した!)
  • 建築費:工夫のために上乗せ(あれ?)
  • トータル:思ったほど安くなかった…

これは、以前書いた「旗竿地はなぜ安い?」と、まったく同じ構造です。安い土地には、建てる段階で追加コストがかかることがある。土地の値段だけを見て判断すると、この部分を見落とします。

大事なのは、「土地+建物」のトータルで考えること。土地が安いからといって、トータルで安くなるとは限りません。


北向きで、本当に気にすべきは「湿気」

北向きの家は湿気対策が大事になる

では、北向きの家で、具体的に何に気をつければいいか。現場目線で言うと、一番は湿気です。

日が当たらない=乾きにくい

北側は、日が当たりません。日が当たらないということは、乾きにくいということです。

  • 建物の北面は、湿気がこもりやすい
  • 地面も乾きにくい
  • 結果、じめっとしやすい

明るさの問題より、この湿気の方が、暮らしに影響します

対策①北側の部屋は「使い方」で工夫する

一つの手は、北側の部屋を、居室にしないという考え方です。

  • パントリー(食品庫)にする
  • 物置・収納スペースにする

そして、そういった部屋には、強制換気扇を設置する。天井、または壁に換気扇をつけて、湿気を強制的に外に出す。これだけで、かなり違います。

「北側の暗い部屋を、無理に居室にしようとしない」。間取りの段階で、そう割り切るのも、現実的な選択です。

対策②北面の犬走をコンクリートにする

もう一つ、外構での対策です。建物の北面の犬走(いぬばしり:建物のまわりの細い通路部分)を、コンクリートにするという手があります。

土のままだと、日が当たらず、いつまでも湿った状態が続きます。コンクリートで舗装しておけば、その分、地面からの湿気を抑えられます。

ただし、雨水の排水処理は、しっかり計画しておくこと。コンクリートにすると水が地面に染み込まなくなるので、雨水がどこへ流れるかを設計しておかないと、逆に水たまりの原因になります。ここは、外構業者としっかり相談してください。


明るさは、そこまで神経質にならなくていい

明るさは照明でカバーできる部分も大きい

一方で、「明るさ」については、正直、そこまで神経質にならなくていいと思っています。

そもそも、日中家にいる時間は?

考えてみてください。日中、家にいる時間は、どれくらいありますか?

共働きだったり、日中は仕事や外出で家にいない、という家庭は多いです。そういう暮らし方なら、「日中の自然光」の優先度は、実はそこまで高くありません。

「南向きじゃないと暗くて…」と心配する人は多いですが、そもそも家にいる時間帯を考えると、影響が小さいケースもあるんです。

照明でカバーできる部分は大きい

そして、明るさは、照明でかなりカバーできます

  • 昼白色のLEDを選べば、しっかり明るくなる
  • 今の照明は性能がいいので、暗さで困ることは少ない

自然光にこだわって設計に大きなお金をかけるより、照明でカバーする方が現実的な場面もあります。ここは、割り切っていい部分だと思います。


それでも「アリ」なケース

デメリットを受け入れれば北向きもありうる

ここまで、北向きの注意点を書いてきましたが——全部がダメなわけでは、まったくありません

間取り次第で、暮らしやすさは全然変わる

現場でいろんな家を見てきて思うのは、間取り次第で、暮らしやすさは全然変わるということです。

  • 北側をどう使うか
  • 光をどこから入れるか
  • 生活動線をどう組むか

同じ北向きの土地でも、間取りの工夫で、快適に暮らせる家になります。逆に、南向きでも間取りが悪ければ、住みにくい家になる。方角だけで、家の良し悪しは決まりません

デメリットを受け入れれば、安く済むことも

大事なのは、デメリットをちゃんと理解した上で、受け入れられるかどうかです。

  • 日当たりは、南向きに比べれば劣る
  • 湿気対策は、しっかりやる必要がある
  • その上で、価格差が魅力的か

これを納得して選べるなら、北向きの土地で、安く家を建てることは十分可能です。「知らずに買って後悔する」のと、「分かった上で選ぶ」のは、まったく違います。


まとめ:施主がやるべきこと

北向きの土地は土地と建物のトータルで判断する

長くなったので、まとめます。

なぜ北向きは安いのか

  • 昔から人気がなく、避けられてきたから
  • 安さには、ちゃんと理由がある

安さは建築費で相殺されることがある

  • 日当たりの不利を、設計で補う必要がある
  • 設計力のある業者に頼む必要も
  • 土地で浮いた分が、建物で出ていく可能性

本当に気にすべきは「湿気」

  • 日が当たらない=乾きにくい
  • 北側の部屋はパントリーや物置にして、強制換気扇を設置
  • 北面の犬走をコンクリートに(雨水の排水計画はしっかり)

明るさは、そこまで神経質にならなくていい

  • 日中家にいないなら、優先度は下がる
  • 昼白色のLEDで、かなりカバーできる

それでも「アリ」なケース

  • 間取り次第で、暮らしやすさは全然変わる
  • デメリットを受け入れられるなら、安く済むことも

北向きの土地を検討するときに、一番大事なのは——土地の値段だけで判断しないことです。

「土地が安い」だけを見るんじゃなく、「この土地に建てたら、建物にいくらかかるか」まで含めて考える。できれば、土地を決める前に、工務店や設計事務所に相談して、その土地でどんな家が建つか、いくらかかるかを確認しておくのが安全です。

安さには理由がある。でも、その理由を理解して受け入れられるなら、北向きの土地は、十分に選択肢になります。

業界の中の人として、これからも施主が知らずに損する仕組みを、正直に伝えていきます。

次回予告

次回も、現場で見てきた情報を、施主目線で翻訳してお届けします。

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