土地を探していると、擁壁(ようへき)のある土地が出てきます。高低差のある土地で、土が崩れないように支えている壁のことです。
こういう土地は、周りより安いことがあります。
「眺めがいい」
「価格が魅力的」
そう思って検討したくなる気持ちは分かります。でも、建築と土木の両方の現場を見てきた立場から、正直に言います。
古い擁壁のある土地は、わざわざ選ばなくていいです。
理由はシンプルで、リスクが読めないからです。今回は:
- 古い擁壁は、中身が分からないという話
- 「いつ崩れるか」は誰にも予想できない
- やり直し工事は、お金だけの問題ではない
を、現場目線でお伝えします。
古い擁壁は、中身が分からない

まず、一番の問題から。
昔の擁壁は、作りがバラバラ
擁壁にはいろいろな種類がありますが、特に気をつけたいのが古い時代に作られたものです。
- 大谷石などの石を積んだもの
- 古いブロック積み
こういった擁壁は、今の基準で作られていないことがあります。問題は、外から見ても中がどうなっているか分からないことです。
鉄筋が入っていない、中に空き缶
実際に解体してみると、驚くようなものが出てくることがあります。
- 鉄筋が入っていないブロック積み
- モルタルをケチったのか、中に空き缶が入っていたもの
笑い話のようですが、昔はこういうことが、けっこうありました。
見た目はきれいに積んであっても、中身がどうなっているかは、壊してみるまで分かりません。これが、古い擁壁の一番怖いところです。
「大丈夫そう」は、見た目でしかない
だから、「見た感じ、しっかりしてそうだから大丈夫」という判断は、あまり意味がありません。
表面が整っていても、中がスカスカかもしれない。逆に、少し汚れていても、しっかり作られているかもしれない。外からは判断できない、というのが実際のところです。
「いつ崩れるか」は、誰にも分からない

ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。
正直、僕でも判断は難しい
「専門家に診てもらえば安心」——よく言われることですが、正直に書きます。
擁壁や土留めが、いつ崩れるかなんて、誰にも予想できません。
僕自身、建築と土木の現場をやってきましたが、それでも判断するのは難しいというのが本音です。ひび割れの有無や、傾きの程度はある程度見られます。でも「この擁壁があと何年もつか」は、誰にも言えません。
「診てもらえば安心」ではない
ここを誤解してほしくないんですが、専門家に診てもらうこと自体は意味があります。明らかに危険な状態なら分かりますし、不適格な構造かどうかも判断できます。
ただ、「診てもらったから、この先も安心」とはならないということです。読めないものは、専門家でも読めません。
最近の雨を考えると、なおさら
しかも近年は、雨の降り方が変わってきています。
昔では考えられなかった量の雨が、短時間に降ることがあります。擁壁は、背後の土が水を含むと、それだけ大きな力を受けます。設計された当時の想定を超える雨が、普通に降るようになってきました。
こういう状況を考えると、わざわざ擁壁に支えられた土地を選ぶ必要はない、というのが僕の考えです。
やり直し工事は、お金だけの問題じゃない

「古い擁壁でも、やり直せばいいのでは?」と思うかもしれません。でも、これが簡単ではありません。
隣地との間の擁壁は、特に難しい
擁壁のやり直しで一番やっかいなのが、隣の土地との間にある擁壁です。
擁壁を作り直すには、いったん今の擁壁を撤去します。つまり、土を支えているものを、一時的になくすわけです。
そうすると、隣の家が傾く恐れが出てきます。土が動けば、その上に建っている建物に影響が出る。だから、慎重な工事が必要になりますし、場合によっては工事自体が難しいこともあります。
隣の人との関係も絡む
工事をするには、隣の敷地を使わせてもらう必要が出ることもあります。境界の位置がはっきりしていなければ、そこから話がこじれることもあります。
つまり、擁壁のやり直しは、お金を出せば解決する話とは限らないんです。
「安いから」で手を出すと、後が大変
土地が安い理由が擁壁にあるなら、その安さはリスクの値段です。
やり直すとなれば高額ですし、工事そのものが難しい場合もある。売るときも、買い手が見つかりにくい。安く買ったつもりが、身動きが取れなくなる——そういうことが起こり得ます。
まとめ

まとめます。
古い擁壁は、中身が分からない
- 大谷石や古いブロック積みは、今の基準で作られていないことがある
- 鉄筋が入っていない、中に空き缶が入っていた例も
- 外から見ても、中身は分からない
「いつ崩れるか」は誰にも予想できない
- 経験を積んだ人間でも、判断は難しい
- 「診てもらえば安心」とはならない
- 近年の雨の降り方を考えると、なおさら
やり直し工事は、お金だけの問題じゃない
- 隣地との間の擁壁は特に難しい
- 隣の家が傾く恐れもある
- 境界や近隣との関係も絡む
このブログでは、旗竿地や北向きの土地について「安いには理由があるが、理解して選べばアリ」と書いてきました。でも擁壁については、少し立場が違います。
古い擁壁のある土地は、わざわざ選ばなくていいと思います。
理由は、リスクが読めないからです。旗竿地や北向きは、デメリットがはっきりしていて、対策も計画できます。でも擁壁は、いつ何が起きるかが分からない。しかも、いざという時の影響が大きすぎます。
土地は他にもあります。安さに惹かれる気持ちは分かりますが、読めないリスクを抱える必要はありません。
業界の中の人として、これからも施主が知らずに損する仕組みを、正直に伝えていきます。


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